2022年4月から改正育児介護休業法が施行され、男性の育児休業取得促進が大きなポイントとなっています。ロシュ・ダイアグノスティックスも、例外ではありません。近ごろは妊娠中の社員だけでなく、出産を控えた妻を持つ社員にも、育休の取得希望をかならずヒアリングするようになりました。女性ではすでに9割以上の社員が育休を取得しており、ライフステージや家庭環境に寄り添う制度が、キャリアとプライベートの両立をサポートしています。
男性の育休取得も、これからさらに一般的になっていくでしょう。一足先にそれを経験したロシュ社員に、取得のきっかけや育休中の出来事、仕事への影響などを聞きました。
奥さん(写真左)と山口さん(写真右)
奥さん
所属:品質管理担当部署
2019年3月1日より6ヶ月間の育休を取得
山口さん
所属:IT
――育休を取得しようと考えた経緯を聞かせてください。
山口:妻の妊娠がわかってすぐのころから考えていました。妻がいずれ職場復帰することを踏まえて、ちゃんと役割分担できるように、僕も育児のスキルを身につけておきたかったんです。人事部から、育休のおおまかな制度についても聞いていました
奥:僕もそうですね。妻の負担を減らしたいし、乳幼児の育児に関われるのはわずかな間。その貴重な時間を逃したくないと考えていました。ただ、2019年当時にはまだ、同じ部署で育休をとった男性がいなかったため、取得経験者の女性に話を聞いたり、同僚に「育休とろうかな?」と軽く相談したりと、ジャブを打つところからはじめました。でも、周りはみんな「いい機会だね」「仕事はなんとかするから」とポジティブな感想をくれたんです。
――そこから、具体的なスケジュールはどのように詰めていったのでしょうか。
奥:業務引き継ぎにあたって無理のないスケジュールを考えつつ、実家のサポートとバトンタッチする形で、出産3か月後からの取得を決めました。取得期間は6ヶ月間。育児休業給付金の支給率が、180日間までは給与の67%なんですけど、以降は50%に下がるんです。だから、その割合が変わるタイミングで復帰するのがいいと考えました。
山口:僕も給付金の割合と保育園入園のタイミングを加味して、同じく6ヶ月間に決めましたね。ちょうど新しくできた国の制度「産後パパ育休」も活用しました。
――出生後8週間以内に4週間までの休暇を取得できる“男性版産休”といわれる新制度ですね。これまでの育休制度と違って、タイミングを分けて2回取得することもできると聞いています。
山口:そうです。ただ、僕はできるだけ期間をつなげて取りたかったので、人事にどうすれば効率的かを相談しました。それで、まずは産後すぐ「産後パパ育休」として4週間休み、1週間の有休を挟んで、そのまま育休に突入したんです。
――育休取得にあたり、仕事面での不安はありましたか?
奥:やっぱり自分が休むぶんマンパワーは減ってしまうので、申し訳ないなという思いはありましたね。担当していた業務の後任も決まっていなかったから、同僚への負担が増えるのは心配でした。
山口:僕はITという職種柄もあってか、業務の引継ぎ先を明確に決めてから休めたので、その点は助かりました。そのぶん、復帰後に自分のポジションが残っているか少し不安はあったかもしれません。
――その不安は、どうやって解決したんですか?
山口:育休取得の調整をしている間に、部内で今後の組織や方向性について話す場面があったんです。それで、会社が動いている以上はつねに新しいプロジェクトが生まれていくし、組織も変わっていくものだと感じて。「いまある仕事を手放しても、復職したタイミングでまたやりがいのあるチャレンジに出会えるだろう」「自分でつかみにいけるチャンスがあるだろう」と思えたことで、不安が消えました。
――育休取得中は、どのように過ごしていましたか。
山口:いつ何時でも起きて、赤ちゃんに対応していました。授乳だけは代われないから、ほかのタスクを引き取るように心がけていましたね。「夕食を作ってくれたから食器を洗おう」「昨日はこれをしてくれたから、今日は僕がこれをやる」というように、暗黙の了解でだいたいフェアに分担できていたと思います。
奥:うちも家事は気づいたほうがやりつつ、育児には二人でコミットしていましたね。育休中の寝かしつけは、もしかしたら僕のほうが多くやっていたかもしれない。なのに、復職して家を空けたら、その日の夜は、なぜかギャン泣きされたんですよ! あれはショックでした……。
――印象的だった出来事はありますか?
山口:子どもを抱っこして電車に乗ったとき、大学生くらいの方が席を譲ってくれたことです。若い人たちがそんなことに気づいてくれるなんて、うれしいなって思いました。
奥:それはうれしいね。あとは、平日に出かけられるのはいいけれど、子育て広場や公園に父親が少なくてさみしかったりとか……。
山口:わかります! 平日って本当に少ないですよね。
奥:これから増えていくんですかね。でも、首がすわったり寝返りを打ったり、子どもの成長をリアルタイムですべて見られたことは、本当によかったなと感じました。初めて寝返りをしたときなんかは、ひとしきり喜んだあと、動画を撮るためにまたあおむけに戻したりして。育休を取ったからこそ味わえた経験ですね。
山口:本当ですよね。僕はもともと4月に戻る予定だったのですが、復帰前の面談で「やっぱりGW明けからにしようかな……」と相談して、最終的には合計7ヶ月間の休業となりました。いま思えば、もっと長くてもよかったなと思います。
――育休中は、職場とコミュニケーションを取っていたんですか?
山口:制度や手続きの事務的なやりとりはあったけれど、ほかはないですね。
奥:業務用の携帯電話もパソコンもいったん返却してしまうんですよ。だから、業務の連絡は受けられない。メールが読めたらついつい気になっちゃったと思うから、こうやってすっぱりリセットしてもらえるのはありがたかったですね。
――育休からの復帰にあたって、準備はどのように進めていきましたか。
奥:復帰の一ヶ月前に、人事やチームの上司と面談がありました。半年も会社を離れていると、忘れてしまっていることもあったので、丁寧に引き継ぎをしてもらえて非常に助かりましたね。
山口:僕も、休業中に変わった組織体制についての説明や、新しいプロジェクトのインプットをしてもらいました。あとは、規則正しい生活の練習ですね。赤ちゃんのお世話で変な時間に寝たり起きたりする生活になっていたから、ちゃんと毎朝早起きして通勤できるかな……という不安がありました。
――育休を取得したことは、仕事になにか影響を与えましたか?
奥:仕事とプライベートの関係を見直す、いい機会になりました。それまでは夫婦二人の生活だったから、子どもを育てながら働くのはもちろん初めて。これからどういう重心で働いていくかを意識できたと思います。
山口:確かに、人生で優先すべきものを再確認できたことで、オンとオフの切り替えをする意識がつきました。あと、育休でそれまでの仕事や定例会議のスケジュールなんかをいったんリセットできたのもよかった。「これから残業はしない」「18時以降はミーティングも入れない」みたいな調整がしやすかったです。
奥:また、コロナ禍でリモートワークが浸透したことは、育児の面でも助かっていますね。復帰後の働き方を支えてくれる制度のひとつになっているなと感じます。保育園がコロナで休園になってしまったとき、すんなりと看護休暇がとれたこともありがたかったです。
――では最後に、男性育休の取得を考えている方々に向けて、メッセージをお願いいたします。
奥:興味があって状況が許すなら、絶対に取ったほうがいいと思います。我が子の成長を間近で見守れるのは、何物にも代えがたい時間です。ただ、職場の状況にはいろんなケースがあるでしょうから、取りたい意思が芽生えたとき、早めに相談することが大切。そうすれば、案外なんとかなるものです。
山口:「男性は育休が取りにくい」というのは、じつは自分のマインドセットの問題だったりするんですよね。つい「チームに迷惑だからとても取れない」などと思ってしまうけれど、自分が思っているほど周りは気にしていなかったりする。社会はどんどん変わっているから、取引先などでも、相談してみれば意外とポジティブに受け止めていただけるかもしれません。家族と相談して育休が必要だと感じたなら、ぜひトライしてみてください。
ロシュ・ダイアグノスティックスには、子どもが産まれてから3歳の誕生日を迎える前日まで育休を取得でき、小学校卒業までは時短勤務を選べる制度があります。これらの制度をフル活用しながら、ご自身のライフプランに「家族で過ごす時間」や「育児を優先する期間」を取り入れている社員も、少なくありません。
人事担当者は「制度などのハード面はもちろん、復職に対する不安といったソフト面までをケアできるよう、これからも環境を整えていく予定です。そうすれば、誰でも後ろめたさを感じることなく、育休を取得できるようになるはず。奥さんや山口さんのように、経験者の言葉から学びながら、改善を重ねていきたいですね」と話します。
育休取得を当たり前のこととして、周囲も協力するカルチャーを根付かせていくために。ロシュは、歩みを続けていきます。