ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社(本社:東京都港区/代表取締役社長 兼 CEO:小笠原 信)は、脳脊髄液(CSF)検体でβ-アミロイド1-42とリン酸化タウ蛋白(181位)を測定する検査薬「エクルーシス試薬 β-アミロイド1-42」および「エクルーシス試薬 リン酸化タウ181」の製造販売承認を、2025年3月17日に取得しました。
国内の認知症有病者数は、2025年には675万人~730万人(65歳以上の高齢者の約5人に1人)に上昇すると推定されており1)、超高齢社会を迎えた日本において、大きな社会課題となっています。認知症の約60~70%を占めるのが、アルツハイマー型認知症です。この疾患は脳にアミロイドβと呼ばれるタンパク質がたまったり、リン酸化タウというタンパク質が塊を作って神経原線維変化と呼ばれる病変ができたりすることが特徴で、これらの病変の影響で神経細胞が障害を受け、脳が委縮していきます。近年、早期アルツハイマー型認知症の治療薬が開発され、治療の対象となる軽度認知症を診断するための検査が必要となっています。診断補助に使用される検査のうち、現在、保険適用となっているのはアミロイドPET検査とCSFを用いた検査だけです。
このたび承認された「エクルーシス試薬 β-アミロイド1-42」および「エクルーシス試薬リン酸化タウ(181)」は、CSF中のβ-アミロイド1-42(Aβ42)とリン酸化タウ蛋白(181位)(pTau181)の比率(pTau181/Aβ42比)を調べることで、アルツハイマー型認知症の診断を補助する検査薬です。電気化学発光免疫測定法(ECLIA法)を測定原理とし、国内の医療機関や検査センターで広く採用されている当社のコバスシリーズの全自動免疫分析装置を用いて測定を行います。pTau181/Aβ42比を調べる検査が体外診断用医薬品(IVD)として承認されるのは、今回が初めてです。CSF中のpTau181/Aβ42比は、アミロイドPET検査と同等に脳内β-アミロイドの蓄積状況を把握できるバイオマーカーとして有用と考えられています2) 3)。
ロシュ・ダイアグノスティックスは、対象患者さんの早期治療開始に貢献できるよう、一日も早い保険適用と発売を目指してまいります。また、より正確で、より低侵襲かつ患者さんの負担が少ない方法でのIVD実現に向けて取り組みを続けます。
2024年4月11日、ロシュは、血液検体(血漿)を用いたアルツハイマー病の早期診断を補助する検査薬「Elecsys pTau217」が、FDAのブレークスルーデバイス指定を受けたと発表しました。pTau217は、アルツハイマー型認知症を区別するバイオマーカーの中でも、他のバイオマーカーより高い性能を示すと報告されています4)。詳細は、ロシュグループのリリースをご覧ください。
※国内の状況をお伝えするものではありません。また、国内では未申請です。
1) 『日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究(厚生労働科学研究費補助金厚生労働科学特別研究事業)』、二宮 利治 (九州大学大学院医学研究院附属総合コホートセンター・教授)、厚生労働省 第222回社会保障審議会介護給付費分科会 資料1『認知症への対応力強化』より
2) 認知症疾患診療ガイドライン作成委員会編, 日本神経学会監修. 認知症疾患診療ガイドライン 2017, 医学書院, 2017
3) 日本認知症学会, 日本老年精神医学会, 日本神経学会監修. 認知症に関する脳脊髄液・血液バイオマーカーの適正使用指針(第2版), 2023
4) Janelidze et al. Nat Med. 2020;26(3):379-386; Karikari et al. Lancet Neurol. 2020;19(5):422-433; Palmqvist et al. JAMA. 2020;324(8):772-781; Thijssen et al. Lancet Neurol. 2021;20(9):739-752; Mattsson-Carlgren et al. JAMA Neurol. 2023;80(4):360-369
広報(報道関係者向け)