ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社(本社:東京都港区/代表取締役社長 兼 CEO:小笠原 信)は、新型コロナウイルスワクチンなどに用いられるmRNA医薬品製造用原料として「N1-Methyl-Pseudo-UTP」を12月1日に発売します。
新型コロナウイルス感染症対策として、近年、mRNAワクチンが注目を浴びています。mRNAは体内にも存在する遺伝情報を持つ核酸成分で、通常は4つの塩基配列のうち一つがウリジンで構成されています。これに対し、ワクチンや医薬品として開発されているmRNAには、ウリジンの代わりにシュードウリジン(Pseudouridine)が用いられています。通常のmRNAでは、体内の免疫反応により炎症を起こし、たんぱく質が作られにくくなりますが、ウリジンをシュードウリジンに置き換えたmRNAでは、炎症を抑えられ、目的とするたんぱく質を多く生成することができるためです。
このたび発売する「N1-Methyl-Pseudo-UTP」は、RNA合成原料であるUTP (ウリジン三リン酸:ウリジンを含む核酸原料)のウリジンを、N1-メチルシュードウリジンに置き換えた修飾UTPです。N1-メチルシュードウリジンは、シュードウリジンと同様にウリジンの代わりにmRNA合成に使用可能であるため、新型コロナウイルスワクチンのmRNAや、mRNA医薬品の製造用原料として利用することができます。 N1-メチルシュードウリジンを含む修飾UTPを用いて製造したmRNAは、通常のmRNAと比べて炎症反応が低減されるだけでなく、シュードウリジンを含む修飾UTPで製造したmRNAよりも多くのたんぱく質を生成することが可能です*。
ロシュ・ダイアグノスティックスは、2016年にmRNA医薬品合成原料の販売を開始し、mRNAの転写や合成に用いる原料を取り揃え、多くを動物由来成分を含まない、GMPグレードで提供しています。mRNAを応用した医薬品やワクチン開発が活発化する中、高まる原料需要にお応えできるよう、今後も尽力してまいります。
製品名: N1-Methyl-Pseudo-UTP
分類: mRNA医薬品製造用原料
研究開発用途の少量パッケージ(100mM, 1mL)から、製造用のバルク容量(100mM,100mL)での提供が可能
動物由来成分不含(animal-origin-free(AOF))
2022年中旬以降にGMPグレードとしての提供を予定
広報(報道関係者向け
*参考文献)
Katalin Karikó, et al “Suppression of RNA recognition by Toll-like receptors: the impact of nucleoside modification and the evolutionary origin of RNA” Immunity, 2005.
Katalin Karikó, et al “Incorporation of pseudouridine into mRNA yields superior nonimmunogenic vector with increased translational capacity and biological stability” Molecular Therapy, 2008.